Setup |
天体写真撮影に欠かせないものの一つに赤道儀があります。 たとえばこんなものとか。 vixen SXD赤道儀 赤道儀自体の原理は単純なのですが、製品となるとかなりの精度が 要求されるため、多くの赤道儀は高価なものになっています。 そこで、陶芸等でおなじみの手回しろくろです。 手回しろくろBW-22L 今回は、こいつを使って、簡易赤道儀を作っちゃいましょう。 簡易といっても、モーターで自動追尾しますよ? 用意する物: 手回しろくろBW-22L 径220×高55mm 質量5.6kg 1000mm アルミ材(コの字) 1000mm アルミ材(ロの字) パイプ固定用具 小型単眼鏡 木材(はざい) U字固定金具 M10ボルト M10ボルト用キャップ 10φスペーサー 10φプラ棒 タミヤ4速クランクギヤーボックスセット ワンダーキットDCモータコントローラSP テーブル脚固定用金具 テーブル脚アジャスター M6高ナット ネジ類少々 配線少々 別に必要なもの: 三脚 自由雲台 安定化電源 カメラ ストップウオッチ 他 ろくろは軸のしっかりしたものを使います グット電機のものより、SHIMPOの方がガタつきがなく、おすすめです。 単眼境は、極軸望遠鏡なので、クロスヘアがついているといいのですが、 そういったものが単独では手に入りませんでした。 激安の天体望遠鏡を探すか、ミリタリー関係をあたればあるかも? 撮影に使用した三脚は耐荷重2kgだったと思うのですが、 ろくろだけで5.6kgあります。まあ平気ですけど。 他はごく一般的なパーツです。 参考: SHIMPO 手回しろくろ TAMIYA 4速クランクギヤーボックスセット |
Step 1 |
まず、簡単に構造を考えますします。 赤道儀とは、日周運動で動く天体の動きに合わせて星を追尾できるようにした、 天体専用の架台のことです。 なんのことやらですが、 要するに、星が24時間で天を一周するスピードで 動くように見えるので、それを追尾する装置です。 星が回っているように見えるので… fig.1 それを追いかけるようにカメラを動かせば… fig.2 スピード計算するとこんな感じ fig.3 一番肝心なのは回転軸の安定性だと考え、 重く、かつ安定した回転軸をもつ、手回しろくろを利用します。 アームの長さを稼いで、工作精度の低さを打ち消すようにします |
Step 2 |
駆動部を整理します。 タミヤ4速クランクギヤーボックスセットを回転させ、 M10のボルトを送り出す構造です。 ギヤ比は5402:1を使用します。 これは、タミヤのギヤボックスセットで一番遅いギヤ比です モーターの回転数制御はワンダーキットDCモータコントローラSPです。 PWM制御で一定速度を出す構造で、3Vの安定化電源につながっています ギヤとボルトは、ステンレスのスペーサーと L字に曲げたギヤボックスの軸のかみ合わせで接合しています。 ギヤの軸が回転すると、スペーサーとM10のボルトが回転し、 ボルトが左に押し出されます。 スペーサーとL字金具の接合部分を安定させるため、 10φのプラ棒を「ちくわ状」に加工し、軸に通してあります 2回転で1分なので、ボルトの2刻みで1分になります 見た目、7〜8分は回せそうですね。 |
Step 3 |
肝心のろくろ部分です。 カメラを固定するアームは「ロの字」の堅牢なアルミ角材を使用し、 駆動部分へ伸びるアームは軽量化のため「コの字」の軽いものを使用します 極軸望遠鏡はパイプ固定用のパーツで固定し、 撮影時にろくろ軸にあわせます。 「ろくろを180°反対側に回し、スコープの中心が同一点を見るようにする」 というあわせ方で撮影しました。 ろくろの台は、机の脚を固定するための円盤を高ナットで固定し 8Mボルト(机の脚のスペーサー)で三脚と固定します。 三脚は、本来1/4インチサイズのボルトなのですが、 机の脚のスペーサーに交換して固定するわけです。 |
Step 4 |
組み立てて完成です。 全景。 一見チープですが、軸の精度が高いため、かなりしっかりした作りです カメラ位置にのっているのはwebカメラを改造したもので。 明るい天体をコンポジット撮影するために用意しました。 Canonの一眼レフ用のレンズが装着出来るようになっています。 M42等の明るい天体なら、これで十分撮影できると思ったのですが、 残念ながら天候に恵まれず、撮影することが出来ませんでした 以下は、赤道儀およびEOS10Dによる作例です(クリックで拡大します) オリオン座 M42 オリオン大星雲および、馬頭星雲 EOS 10D IR-Fir無 100mm F/2.8 L 180秒 クリックで原寸大です 原寸大は大きくてわかりにくいので、切り出して見てみましょう。 まず、ひときわ赤く光るのが、おなじみM42オリオン大星雲です。 M42オリオン大星雲周辺 上からNGC1981散開星団、NGC1977散光星雲、M43(M42に隣接)、M42オリオン大星雲 露出が長いせいか、トラペジウムはつぶれてしまいました。 そして馬頭星雲です。 NGC2024と馬頭星雲 画面上にバラのつぼみのようなにNGC2024という散光星雲があります。 その下にうっすら見えるのが「馬頭星雲」 原寸大写真だと、何となく馬の頭に見えませんか? ヘルクレス座 M13 全天一美しい球状星団 8.7等 100mmマクロF2.8 120s (クリックで拡大します) 赤道儀を使って初期の頃撮影した星団です。 M13周辺 拡大してみると、ボール状にぼやっと星団が写っているのが分かると思います マクロレンズ(普段は花をとるためのレンズ)でもこれだけ写るんです! その他作例: 春先に撮影する夏の星座(09/03/29(日) 配信) アンドロメダ銀河とオリオン大星雲(09/10/11(日) 配信) 念願の馬頭星雲撮影に挑む(09/11/15(日) 配信) 双子座流星群をねらう(09/12/13(日) 配信) 2010年元旦の部分月食(10/01/01(金) 配信)(赤道儀未使用です。天体撮影なので一応) |
Step あとがき |
いかがだったでしょうか。 こんな手作り赤道儀(1/24スーパーろくろちゃん2号)でも、 180秒程度なら十分追尾可能なことが分かると思います。 しかも東京23区でこの写り。 場合によっては2等星ぐらいまでしか見えないぐらいの明るさですよ?! 実は、これにはタネがあって、 最近の画像処理ソフトは、レンズの 周辺減光、ケラレ、光害などを 驚くほど補正で目立たなくすることが可能なのです。 画像処理にはYIMGというフリーソフトを使用させていただいたのですが、 ダークノイズ(センサーの熱ノイズ)の除去からガンマ補正まで かゆいところに手が届く仕様で驚きました。 補正後に、M13が浮かび上がってきたときの感激といったら… 感想、レポートまってま〜す。 |